「だれ映」におけるポケモン映画に対する怨嗟の声が面白いというお話
破壊屋さんという映画レビューブログを運営されているサイトが1年に1回のビッグイベントとして行っている「この映画はいったい誰が観に行くんだ!?大賞」、通称「だれ映」という企画がめっぽう面白い訳でして。明快明白なタイトルの通り、投票によりその年における「何故こんな映画が世の中に出てしまったのだ」を決め、コメント付きでまとめられ発表されておられます。
破壊屋さんは相当なシネフィルの方であり、当然、そんなサイトに集う方も選りすぐりの手練れの猛者な方々な訳です。結果、「だれ映」という企画は参加者の皆様の研ぎ澄まされた映画愛や映画知識を元に素人の私たちにいかにこの世界にコクのある映画が存在するのかというのを面白おかしく伝えて下さる場と化しており、辛いとき、悲しいとき、仕事で大きな失敗を犯してしまった時に読むとなんだか勇気が湧いてきそうな、とっても為になる名文があふれております。
そして破壊屋さん自身の上位の作品レビューや上位の作品に添えられた名コメントと共に、個人的に「だれ映」で楽しみにしているのは最下位付近で必ず食い込むその年に後悔された劇場版ポケットモンスターに寄せられた怨嗟の声。「俺が普通の映画ファンだったら、こんな映画見に行かない……でも、見に行かないといけないんだ……!(劇場で配布されるポケモンを手に入れるために)」的な、映画ファンとしてのプライドとやむにやまれぬ事情の間で引き裂かれた己の悲鳴のはけ口として「だれ映」が有効活用されてしまっています。
その中で特に、「これは一つの、完成された人間ドラマだ……」と感じさせてくれたのが、mohnoさんのコメント。
2009年
第94位 劇場版ポケットモンスター/ダイヤモンド&パール アルセウス 超克(ちょうこく)の時空へのコメント
mohno さん
自分の意思で見に行くわけではない映画が一番辛いことを実感できる映画。
短い中にmohnoさんの絶望がギュッと詰まっている名文
2010年
第126位 劇場版ポケットモンスター/ダイヤモンド&パール 幻影の覇者 ゾロアークのコメント
mohno さん
シングルCDが握手券となり、映画がグッズ引換券となる時代の象徴。
当時人気上昇中だったAKB48の戦略と絡め、2009年とは違った角度から映画を批判。
2011年
第86位 劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ/ビクティニと白き英雄 レシラム&ビクティニと黒き英雄 ゼクロムのコメント
mohno さん
はじめてゲームの「ポケットモンスター」が登場したとき、パラメータを買えただけの「赤」「緑」が別ソフトとして売り出された。ただ遊ぶだけならどちらかを買えばよいけれど両方欲しがるのも心理。販売数を伸ばす効果もあっただろう。
あれから15年。それを映画でやったのが、本作だ。同時公開だけれど同時上映じゃない。両方見るなら、料金は別々に必要だ。宣伝では「君はどちら“を”見るか」と言っていた。「どちら“から”見るか」じゃない。中身はほとんど同じだから、一方を見れば十分なのだ。でも、息子は2つとも観たがるから、そうした(妻だけが付き添っていった)。
破壊屋の訪問者はほとんど気にとめない映画だろうけど、個人的には100人分くらい投票したい。(強調筆者)
明かされるmohnoさんの家庭事情。映画ファンとして自分が選んだ映画をご覧になられたいはずなのに、選択せざるおえなかった映画が実は――
ちなみに、2012年の「だれ映」における(当然の如くランクインして投票者もきちんとコメントを添えられている)「劇場版ポケットモンスター」の投票コメント欄に、mohnoさんの姿はありませんでした。
2012年「だれ映」における、第142位にランクインした「劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ キュレムVS聖剣士ケルディオ」のコメント欄ですが、やたらとゲーム「ポケットモンスターブラック/ホワイト」に関する配布ポケモン情報について詳しく書かれている方が居られたり、他にもポケモン二次創作まとめサイトを紹介されていたりとポケモン好きな方と一目で分かる文章からいや、「だれ映」じゃなくて君たちが狙ってる客層だよ!!的な残念さで切なくなってしまったのですが、当然今年も新しいポケモンの映画の公開が準備されている訳で、それすなわち来年の「だれ映」下位コメント欄鑑賞の楽しみが確約されているということ。もちろん、破壊屋さんという個人の方が企画されている事であり、来年(というか今年)同様に開催されるかは破壊屋さん次第なのですが、ぜひとも今後もこの楽しい企画を続けて頂きたいところです。ポケモンの映画以外にも、映画ファンにおけるあんな映画こんな映画の率直な感想が楽しめる場となっておりますので……。
関連リンク:
エンタメ:ポケモン映画 アルセウス超克の時空へ(ものづくりにっぽん さん)
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